どうすることもできず困っている状態を表す言葉に「にっちも さっちも 行かない」というものがあるのはご存じだと思います。漢字で「二進も 三進も」と書きますが、クイズ番組などでよく問題に出されることは有名です。しかし、これがソロバン用語から来ているということは余り知られていないようです。
少し話が逸れますが、「九九」と言えば掛け算で使うものですが、昔は割り算にも九九があったのをご存じですか?「割り算九九」と呼ばれるもので、何通りかの方法がありますが、その中の一つに「八算」と呼ばれる技法がありました。「八算」にも「二の段」「三の段」「四の段」と続いて「九の段」まであります。その「二の段」に「20 ÷ 2 = 10」を意味する「二進一十」(にしんがいんじゅう)という九九がありまして、音便により「にっちのいんじゅう」と発音したようです。ここに「にっち」が登場します。同じように「三の段」に「30 ÷ 3 = 10」を意味する「三進一十」(さんしんがいんじゅう。音便により、さっちのいんじゅう)もあって、「さっち」が登場します。ここで大事なことは、20 ÷ 2 = 10 も 30 ÷ 3 = 10 も「割り切れる」ということです。「にっち」も「さっち」も割り切れる九九なのです。
ということは逆に「にっちもさっちも行かない」というのは「割り切れる」の反対の意味になり、「割り切れない」という意味を表しています。「どうやっても割り切れない」から転じて「どういう方法を使っても解決できない、うまく事が進まない」という表現として使用されるようになりました。
どうでしょう? 面白いですよね? 生活の中で使われるソロバン用語としては「御破算」(ごはさん)といういうものもあります。このように、普段なにげなく使ってる言葉の語源や由来を調べることは楽しいものです。皆さんも、他にないか探してみてください。
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