子供が数や量について認識し始めるのは生活のなか、なかんずく「あそび」のなかだと思います。むしろ「あそび」の中で認識を深めていくことのほうが、より効果があるのではないかと思うほどです。そして、それは学校や保育園に行くようになる前から始っています。まだ這い這いしてるころ、目に映るオモチャや絵本の色や形とともに数も把握し、区別(識別)し、その増減や様子の変化についても認知し、理解し、やがて記憶していく…そうした知的活動との相互作用によって脳(知能)もまた発達していきます。
見て触れるあらゆるものからの刺激によって脳がギュンギュン回転し、入力と出力を増幅しながら日々成長しています。
そういうとき、そばにいる大人(最初は親)が、子供の自ら成長する力を上手に誘導できるのが理想ですね。
子供が自ら成長するといっても、子供自身はこのよく解らない「ワクワクする知的好奇心」は何なのか、どのように考えて入口から入っていけばいいのかが解っているわけではないのです。ですので、大人の導きによって、「あ、そうか」「そういうことか」という気付き(理解のきっかけ)を誘発できたら最高ですよね。
天神山そろばん教室では、児童の年齢に応じて「数あそび」から始めることにしています。例えば「おはじき」です。手に取って数を意識します。色分けによって「区別」を意識します。「区別」の意識は「桁(けた)」に通じるものがあります。区別した「おはじき」は異なるコップやお皿に入れますが、そのことで「区別」はより明確になりますし、お皿にキャラクターの絵を貼ることで児童の興味を引き付けることもできます。なにより、卓上でバラけない、うっかり混ざり合わない、お皿の場合は「おはじき」を数えやすい、異なる器を合わせる(たし算する)とき簡単にまとまる、といった利点があります。ひとつ気を付けるべきことは誤飲しないことですね。そこは十分注意する必要があります。可能なら「お手玉」のような誤飲の恐れのない遊び道具も良いでしょう。
また他の例では、「こども銀行」などといったオモチャのお金も私の教室では使用します。といっても、それを模して自作した紙製の硬貨です。ホワイトボード上に掲示しますので、見やすいように大きめに描画しマグネットを貼り付けて、ボード上での着脱や移動が容易にできるようにしています。硬貨を見て金額を数えたり、お金の足し引き(硬貨の枚数の増減と、金額の増減の関係)を認識したり、それを実際に児童自身に操作してもらったりすることで、ボード上の硬貨の動きをソロバンの盤上の珠の配置や動きになぞらえて理解を促していきます。
そうこうしているとあるタイミングで、手で触って実際に枚数を数えられる「おはじき」を使用した計算では枚数に限界があることに気付き、また硬貨の金額が大きくなってくると実際の枚数は(500円を認識するとき1円玉や10円玉に置き換えようとすると500枚とか50枚とか数量が大きくなると)ボード上では扱えなくなるということに気付きます。1000円玉が実在しないことも同様です。ここに「概念で捉える」というブレイク・スルーが生まれます。つまり「成長」です。有形の、実在の、感触のある数量から、無形の、虚像の、脳内にしかない数量へと理解の幅を拡大していきます。そこの「つなぎ」あるいは「みちびき」に大人がうまく介在できたら良いですよね。私もそういう大人になれたらいいなと、いつも考えながら児童に向き合っています。もっと教材や教具を工夫できないか、もっと各児童の個性に即した指導ができないか、反省と研鑽の毎日です。
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